p-n接合ダイオード


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p-n接合ダイオード

注意:この情報内の例題に必要なファイルは、Lumerical社英語サイトからご利用願います。

問題定義
p-n接合ダイオード特性とその動作は、pタイプとnタイプ材料間の境界にできた、接合部内のキャリアの振る舞いに密接に関係しています。p-n接合は、様々な他のデバイスの基本構成であり、ここで使用される解析技術は、他の問題にも適用することができます。ここでは、理想的シリコンp-n接合ダイオードの、電流-電圧特性が取り扱われます。

詳細問題定義
ここで扱われる理想ダイオードは、実際のデバイスの特性や振る舞いに比べて、いくつかの単純化が行われております。しかしながら、ここでの解析結果は、電流-電圧関係の解析的結果との比較が可能です。理想ダイオードは、下記の近似でモデル化されます。
• 1次元化
• 理想オーミックコンタクト
• 急峻なメタルージカル接合
• 再結合なし

これらの近似を基に、デバイスのいくつかの重要な特性が解析的に定式化されます。これらの値は、数値シミュレーション結果の正当化に使われます。

内蔵電位
完全なオーミックコンタクトの仮定されたp-n接合の内蔵電位は、接合プロファイルと独立しています。接合とコンタクト間の距離が、pタイプとnタイプ領域で、局所的熱平衡が成立するほど十分大きいと仮定しているので、内蔵電位Vbi は下記の式で決定されます。

ここでkは、ボルツマン定数で、 NAはpタイプ領域アクセプター密度です。 NDnは、nタイプ領域のドナー密度で、niは、真性キャリア濃度です。

接合幅
急峻な接合が構成されると、空乏層の幅は完全枯渇近似で評価できます。上記で決定された内蔵電位を使用することにより

ここでεは材質の誘電率です。ここでは、下記のドーパントに関する近似が適用されています。
• 完全イオン化したドーパント
• 急峻な接合

• 完全枯渇近似として知られている、空乏層でのキャリア密度は無視

例えばNA >> NDのように、一方に比べて他方が極端な高濃度の接合の場合は、下記のような簡単化が可能です。 この場合、空乏層の大部分は、低濃度ドーパント部になります。

ダイオード電流
p-n接合を流れる電流のキャリア注入と、空乏層における再結合を無視することにより、下記の式が導かれます。

ここで、Aは接合面積で、Vは印加電圧です。逆バイアス飽和電流I0は、nタイプ領域の少数ホール濃度で, pnと、pタイプ領域の少数電子濃度npにより表されます。 Dn,pは拡散係数で、アインシュタインの関係式に従い、少数電子と正孔の移動度と関係づけられます。

Ln,pは拡散長で、キャリア寿命(再結合による)τn,pと関係づけられます

逆バイアス電圧(V < 0)が印加され、|V|がkT/qの数倍以上の時、ダイオードは逆バイアス飽和電流I0になります。

空乏層から離れた適当な場所では、(nとpの添え字は、各領域を表します。)

,
平衡状態の式は

従って、下記の結果が得られます

静電容量は、空乏層に形成された電荷によるp-n接合と関係づけられます

従って、理想的p-n接合の静電容量は、次のようになります

また、NA >> ND時は、上記の式は、下記のように単純化できます

議論と結果

シミュレーション設定
シミュレーション設定が終了すると 下記のスクリーンショットのようになります。 (xz平面)

シリコン基板は、緑のドーピングボックスを使って、pタイプとnタイプの2つの領域に分かれています。定ドーピング領域は、ドーパントタイプ(nとpタイプ)とドーパント濃度によって定義されます。エミッターとベースコンタクトは、基板の両端にあります。コンタクトは、電流―電圧プロットを生成するスイープの電圧領域に関係づけられます。

グラフィカルユーザーインターフェイス (CAD) において、オレンジ色の線は、DEVICEのシミュレーション領域を示 します。自動メッシングが使われる時は、メッシュサイズは下記によって決定されます。
• ユーザー設定で、シミュレーションごとには自動アップデートされない、メッシュ線の長さ全体制限 (minとmax)
• メッシング三角形の最小角を決める全体品質制限
• ドーパント分布

品質制限は、最終的メッシングが、最小角制限と適合してるか確認するため、再度 適応して下さい。
小さな構造体や静電的特性の正確なモデリングでは、特に急峻な接合部分において、自動メッシュアルゴリズムで生成されたメッシングよりも細かいメッシングが必要になるかもしれません。このような場合は、この例で示されるように、メッシュ制限領域が 必要な場所で 細かいメッシュを手動で定義するために使われます。

シミュレーション領域は、xz平面内の基板、アノウドとカソウドを含むように設定しなければなりません。この構造は、y方向への変化がないので、z方向の1Dシミュレーションは同一の結果を与えます。シミュレーション領域は、T=300Kの温度に設定して下さい。この温度は、他の温度でのデバイス動作をモデリングする場合は変更して下さい。

結果
内蔵電位と接合幅は、シミュレーションから簡単に取り出せる2つのパラメータです。理想接合に関するこれらの値は、解析的にも計算できます。従って、それらの比較により、理論とシミュレーション間の一致が確認できます。

コンタクトへのバイアス電圧は、レイアウトエディタの左下にある、electrical contactsボックスを使って設定できます。そのボックス内の"Value"値は、スイープのステップ数と同様に、スイープの始めと終わりの電圧を含むように変更できます。接合幅と内臓電位は、平衡下におけるpn接合の0バイアス特性なので、両コンタクトに0の定電圧を使います。

'Run’ボタンを押して、0バイアスでのシミュレーションを実行して下さい。シミュレーションが終了すると、計算結果が保存されます。その計算結果を含んだオブジェクトツリー内のオブジェクトのアイコンは、小さく赤い表示で示されます。この場合、シミュレーション領域はの表示になります。'Device region’オブジェクトを右クリックし、'Visualize’をクリックして下さい。Visualizerウィンドウが開きます。必用なデータを選択しプロットして下さい。

内蔵電位
内蔵電位Vbiは、nタイプとpタイプ材料のエネルギー差を表します。この内蔵電位は、印加電圧が存在しない場合のもので、この電位によって電流は流れません。この値は、eV単位です。スクリプトプロンプトに、下記のスクリプトをタイプして下さい。

位置の関数として、真性エネルギーレベルを取り出します。最大と最小値の差を計算します。eV単位で、内蔵電位に対応したこの電位差を印刷します。

解析的には:

シミュレーションからは:




kT/q = 0.025860 eVを使用し、上の式にこれらの値を代入すると、内蔵電位の理論値は、0.709eVと計算され、シミュレーション結果に近いことがわかります。

接合幅
スクリプトファイルpn_diode.lsfを開いて実行して下さい。このスクリプトは、真性エネルギーを取り出します。接合幅は、nタイプとpタイプ材料のエネルギーレベルが変化しなくなるまでの、x方向の領域として取り出すことができます。上記のプロットのスライスを得るために、DEVICEでは三角形メッシングを使っているので、直交メッシュポイントに三角形頂点を追加する必要があります。スクリプトの2番目の部分ではこの計算が行われ、ジャンクション幅が計算されます。

前のセクションで示されたように、接合幅の解析的式から、一方のドーパント濃度が非常に高い場合、空乏層の大部分は、低ドーパント濃度部になります。今回の場合は、NA >> NDなので、式は次のように単純化されます。

今回のシミュレーションでは:




これらの値を上記の式に代入すると、W = 0.96 μmとなります。実際の空乏層は、完全枯渇近似のため不正確となり、1μmより少し伸びています。空乏層では、電子と正孔のキャリアが存在し、キャリアの量は空乏層の両端で顕著に増加し、これにより、イオン化したドーパント電荷を打ち消して、空乏層の幅を拡張しています。従ってこのスクリプトの計算では、接合幅が約1.1 μmとなります。この場合ジャンクション幅は、最大エネルギーの99%のところから、最小エネルギー99%までの値です。

電圧電流関係
Layoutボタンをクリックして、レイアウトモードに移行して下さい。エミッターコンタクトの"value"を、5ステップで0.05 voltsから0.5ボルトまでの領域に設定して下さい。Runボタンを押して下さい。シミュレーションが終了したら、'Device region’オブジェクトをクリックした後、更に’Visualize,'をクリックし’emitter.'を選択して下さい。電流―電圧プロットのvisualizerウィンドウが開きます。 "I"の結果に興味があります。同じプロットに、他の結果を表示したり、不要な結果を削除したりできます。プロット画像を調整するために、画面の上にある’show/hide chart settings’ボタン をクリックして下さい。結果のメモリースケールに、'log 10y’を適応して下さい。電流―電圧プロットは、下の図のようになります。

エミッターバイアス電圧が正の場合、ダイオードは順方向バイアスとなり、電流はバイアス電圧に対して指数関数的に増加します。

ここで、ηはアイデアラティ(理想)因子で1(理想)から2(否理想)です。この式の対数を取ることにより、対数スケールのプロットの傾きが一定になることを示しています。

このことは、上の図から確認できます。

接合静電容量
次に興味があるのは、ダイオードの逆バイアス時の接合静電容量です。バイアス領域を、10ステップで-0.2ボルトから-4ボルトに設定して下さい。静電容量は、変化した電荷量を電圧変化で割ることにより簡単に計算されます。
スクリプトファイルを開いて、実行して下さい。電子を基にした接合静電容量と、正孔を基にした接合静電容量が計算できます。単純化した静電接合容量の式を使って、理論的静電容量Cjが計算され、同じグラフに表示されます。

グラフから両社が一致していることがわかります。

再結合効果
今までのシミュレーション設定では、理想pn接合ダイオードをモデル化するため、キャリアの再結合と生成を無視してきました。実際には、これらの現象は、デバイスのキャリア分布や電流―電圧関係に影響します。
Layoutボタンをクリックして、レイアウトモードに移行して下さい。今回のシミュレーションで使用されるシリコン材質特性の変更をするために、materialsボタン をクリックして下さい。'Mobility’タブ内で、キャリアの’Impurity’散乱のため、'Masetti’モデルを選択して下さい。

'Recombination’タブ内で、トラップアシステッド(Shockley-Read-Hall)とAuger再結合モデルをチェックして下さい。
下記のように、トラップアシステッド再結合モデルの電子と正孔のキャリア寿命を定義して下さい。
Auger再結合モデルでは、下記のように、キャリア(電子/正孔)捕獲係数を定義して下さい。

'Surface Properties’タブで、Addボタンをクリックして下さい。 これにより、材質データベース内の他の全ての材料のリストを確認できます。 コンタクトに使用される金属を選択し(今回の場合はAl – CRC)、OKをクリックして下さい。デフォルトの表面再結合速度を使って下さい。

エミッターコンタクト電圧を設定するために、DC電圧スイープオプションを選択し、印加電圧領域を、0.05ボルトステップで0.05Vから0.8Vに設定して下さい。電流―電圧関係を確認するために、再度シミュレーションを実行して下さい。 シミュレーションが終了したら、'DEVICE region’オブジェクト上で右クリックし、エミッターの結果を確認して下さい。 今回は、再結合を考慮しているので、電流―電圧プロットは直線的には増加せず、3つの異なった領域が確認できます。(ここでは対数スケールで示されています。)

逆バイアス電圧―電流特性を見るために、負の電圧を印加できます。逆バイアスダイオード電流は、一定の飽和値に達せず、漏れ電流が電圧と共に変化します。これは、再結合効果を示すものです。
逆バイアスでは、空乏層は電場の増加と共に広がります。この効果は、この領域のキャリアを枯渇させ、(従って枯渇層という別名もあります。)np << ni2の状態となります。トラップアシスト再結合率のモデルは、Shokley-Read-Hall (SRH)公式によって与えられます。

これは、下記のように簡略化され

上記の式が、空乏層で成立します(ここではn << n1, p << p1, とn1 = p1 = ni)。負の符号は、キャリアがこのプロセスで生成されていることを示します。これらの生成キャリアは、電場によりスイープされ 空乏層を横断します。これらのキャリアが、電流に寄与します。

設定手順
この例は、2つの独立セクションから構成されます。シミュレーションは、始めから設定することができます。 2番目のセクションから始める場合は、関連ファイルを使用して下さい。(関連ファイルは、このチュートリアルの最初のページにあります。)

モデル設定
• DEVICEを立ち上げて下さい。
• Materialsボタン をクリックして下さい。 Material Databaseが開いたら下記を追加して下さい。
• 導体(金属)
• 半導体
下記のように特性値を設定して下さい。

導体特性
Material ListからAlを選択して下さい。
DEVICEを使用した電気的シミュレーションに関する金属特性は、仕事関数に限られます。
Material Properties内の仕事関数に4.28 eVを入力して下さい。
仕事関数は、電子を取り出して無限のかなたまで移動するのに必要なエネルギー量です。

半導体特性
半導体モデルは、導体や絶縁体より複雑な特性設定が必要です。 この例では、シリコンの振る舞いを記述する簡単なモデルを示します。 Material ListからSiliconを選択し、'Electronic Properties’タブを選択して下さい。
左の図のように、直流誘電率と仕事関数の値を入力して下さい。 バンドギャップ値は、デフォルトで1.11452 eVと設定して下さい。これにより真性キャリア濃度が約1010 cm-3を与えます。

多くの特性に関する温度依存性モデルが利用できます。温度依存性の適切な温度係数を設定するために、 (温度依存性)ボタンをクリックして下さい。これにより、温度係数変更のダイアログが現れます。この例では、バンドギャップモデルの温度依存性の変更が可能です。 'Fundamental’タブの’Band Gap’特性グループ内の、 ボタンをクリックして下さい。現れたEdit Model Parametersダイアログ内で、下に示されるような温度係数を入力して下さい。係数は、model parameterエディター内の式に対応しています。
示されているように係数を設定したら、OKを押してダイアログを閉じて下さい。温度依存性の状態を確認するために、Material Databaseウィンドウ右下の“Visualize”オプションを選択し、‘T’(温度)を横軸とし、プロットされた結果からEg(バンドギャップ)を確認して下さい。 温度領域を、100 Kから400 Kに設定して下さい。'Create Visualization’をクリックすることにより、下のようなバンドギャップの温度依存性のプロットが行われます。


材質設定を完了するために、'Electronic Properties’タブの’Mobility’タブ内の’Lattice and Impurity Scattering’部で、電子を正孔の移動度を設定して下さい。

これにより、シリコンの基本的モデル設定が完了します。他の特性に関しては、変更しないで下さい。他の半導体に関しても、同様に設定して下さい。
これで半導体設定が終了します。これにより、導体(アルミニウム)と半導体(シリコン)の特性が定義されました。変更を保存するために、OKをクリックして下さい。 これによりMaterial Databaseが閉じられます。新しいプロジェクトとして、ワークスペースを保存して下さい。

• STRUCTURESボタン の矢印を押して、プルダウンメニューからRECTANGLEを選択して下さい。次の表に従って、直方体の特性を設定して下さい。

• STRUCTURESボタン の矢印を押して、プルダウンメニューから別のRECTANGLEを選択して下さい。次の表に従って、直方体の特性を設定して下さい。

• STRUCTURESボタン の矢印を押して、プルダウンメニューから別のRECTANGLEを選択して下さい。次の表に従って、直方体の特性を設定して下さい。

• シミュレーション領域を追加するために、SIMULATIONボタン を押して下さい。上のボタンと異なる場合は、アイコンの右の矢印を押して、プルダウンメニューからSIMULATIONを選択してください。次の表に従って、特性値を設定して下さい。

• SIMULATIONボタンの矢印を押し、プルダウンメニューからMESH CONSTRAINT を選択して下さい。次の表に従って、特性値を設定して下さい。

• DOPINGボタンの矢印を押して、プルダウンメニューからCONSTANTドーピングを選択して下さい。次の表に従って、特性値を設定して下さい。

• DOPINGボタン の矢印を押して、プルダウンメニューからCONSTANTドーピングを選択して下さい。次の表に従って、特性値を設定して下さい。

•下にある"Electrical Contacts" で、新しいコンタクトを追加するために、 ボタンをクリックして下さい。次の特性値を設定して下さい。

ボタンをクリックすることにより、コンタクトの各特性値を変更できます。 例えば、下の図に示されるように(エミッタコンタクトに関して)、両コンタクトに0 Vを適用しています。

シミュレーション実行とデータプロット

• メッシングは、シミュレーション実行ごとに自動的に生成されます。自動生成を行わない場合は、最後に計算されたメッシュをロックするために、左のツールバーのメッシュロックボタン をクリックして下さい。
• Resourcesボタン を押して下さい。それから"Run Tests"ボタンを押し、シミュレーションエンジンが正しく設定されているかを確認して下さい。 初めてこのテストを実行する時、失敗するかもしれません。その場合は、オペレーティングシステムアカウントのユーザー名とパスワードを入力し、"Register"ボタンを押し、それからOKボタンを押して下さい。それから、テストの再度実行を行って下さい。
• シミュレーションを実行するためにRUNボタン 押して下さい。シミュレーションが終了したらobject tree内でDEVICE REGIONオブジェクトを右クリックし’Visualize’をクリックして特性値をプロットして下さい。

visualizer使用方法
表示される計算値は、プロットの下の’Attributes’リスト内に表示されます。'Parameter’グループを展開することにより、印加電圧のようなシミュレーションパラメータに関する結果を確認することができます。もし、表内に示されたパラメータが、'Action’のタイトル下で’Slice’表示の場合は、そのパラメータが選択された時、その機能が現れます。 これにより、結果のプロットで、そのパラメータ値を選択するために、その機能が使われます。両方のコンタクトに定電圧を使用しているので、 'V_emitter’と’V_baseパラメータの変更オプションは利用できません。

また、オブジェクトツリー内で、'Device region’オブジェクトを右クリックし、visualizeをクリックすることもできます。 シミュレーションにおけるコンタクトリストが示されます。任意のコンタクトの電圧電流を確認することができます。